バイアス抵抗の選定方法

更新しました May 13, 2024

環境

ハードウェア

  • Resistor
  • Multifunction I/O Device

バイアス抵抗を設置する際に、接地抵抗はどのような基準で選べばよいのでしょうか?

差動モードはコモンモードノイズが除去できるため、より正確な電圧集録が可能です。しかしながらコモンモードがアナログ入力レンジを大きく超えると差動アンプが正常にコモンモードを除去できなくなり測定誤差が発生してしまいます。そこで回路にバイアス抵抗を接地してコモンモード電流を逃がすことによりコモンモードを小さく抑える必要があります。


 

バイアス抵抗の大きさに明確な定義はなく、ユーザー環境に適したバイアス抵抗の大きさを探していただく必要があります。
*弊社参考バイアス抵抗値:100kΩ~1MΩ
 

バイアス抵抗が大きすぎると抵抗値が大きすぎるため適切に放電ができず、電流を逃がす働きをしません。またバイアス抵抗が小さすぎると並列抵抗として入力インピーダンスが小さくなり、電圧のなまり(ゲインエラー)として測定誤差を引き起こします。したがってバイアス抵抗を選定する際にはゲインエラーの影響を受けない範囲内で出来るだけ小さい抵抗を設置する必要があります。
そこでDAQ ボードの分解能を考慮した適正なバイアス抵抗の理論値を考える必要があります。
 

例えば下の図の様にバイアス抵抗(R1、R2)を設置したとします。
*R1 とR2 は同じ値の抵抗を設置する必要があります、違う値の抵抗を設置した場合コモンモードノイズをバランスよく放電できなくなり、コモンモード電圧がノーマルモードノイズとして測定され測定誤差の原因となります。


ここで合成抵抗の値が入力インピーダンスより十分に高く電圧がなまる原因にならないような抵抗を選ぶ必要があります。このとき参考になる値がDAQ の分解能を基準とした最小分解能(LSB )です。
Mシリーズ(PCI -6251)の場合は分解能が16ビットなので、入力レンジの65535(2の16乗-1*)分の1の値まで計測できます。したがってバイアス抵抗を設置した際に生じる電圧のなまり(ゲインエラー)が65535分の1以下に収まるような抵抗を設置することでバイアス抵抗による電圧のなまりが無視できる範囲内に収まっているといえます。
 

例:
まずバイアス抵抗のR1とR2がグラウンドラインを経由して直列に接続されている形になります、したがって直列の合成抵抗部はR1+R2となり入力インピーダンスの10GΩと並列に接続されている形になります。この全体の合成抵抗値は入力インピーダンス側が十分に大きいためR1+R2に限りなく近づきます。ここで求められた合成抵抗値(≒R1+R2)と出力インピーダンス側を比較して分圧される電圧値がLSB以下である必要があります。
 

出力インピーダンス (0.2Ω) / 合成抵抗 (≒R1+R2) ≦ 65535分の1


したがってR1=R2=6.5KΩ 以上の抵抗を設置する必要があります。しかしながらこれは理論値ですので余裕を持たせて上記の抵抗値の2倍ほどのバイアス抵抗を設置することをおすすめいたします。
(E-シリーズなど12ビット分解能のデバイス使用時はこれより小さい値になります。)


弊社のBNC タイプの差動モード用端子台にはバイアス抵抗があらかじめ搭載されています。


 *分解能の詳しい説明は以下のリンクをご参照ください。